【産婦人科医執筆】赤ちゃんの成長は順調なの?月齢別の大きさの目安について

ご妊娠おめでとうございます!

でも、妊娠初期の頃はまだつわり以外に症状もないし、お腹のなかに赤ちゃんがいる実感がわかない人も多いでしょう。

お腹が実際に出てきて胎動を感じられるようになるまでは、無事に赤ちゃんが育っているのか心配になるかもしれません。

また、(よくも悪くも)お母さんがなにも考えなくてもお腹はどんどん大きくなっていきますが、そもそも、どんなものが赤ちゃんの成長(産婦人科医は“発育”とよびます)に影響を与えるのでしょうか?

今回は、おなかの中での赤ちゃんの発育についてお話しします。

妊娠週数の話

妊婦さんの妊娠期間を表現するときに、一般の方はたいてい「妊娠〇ヶ月」という言い方をします。

大きくなったお腹をみたら、普通は「何ヶ月ですか?」と聞ききますよね。

しかし、産婦人科医は、「妊娠〇ヶ月」ではなく「妊娠〇週」という表現を使います。

母子手帳の受診記録も、受診日を「妊娠〇週△日」と記載するようになっています。

ときどき、妊婦健診にきて「先生、わたし何週なんですか?」と質問される妊婦さんがいます。

産婦人科医としては、「おっとっと(汗)それぐらい分かっていてよ」と思ってしまいますが、たしかに一般の方にはなじみのない表現かもしれません(反省)。

今後の説明のためにも、一度ご説明します。

妊娠週数は、妊娠する前の最後の生理(月経)開始日を0日として数える約束になっています。

そして、そこから数えて、40週0日を分娩予定日としています。実際には、排卵するのが月経開始から約2週間後なので、妊娠0-2週というのは架空の時間(厳密には“妊娠”していない)ということになります。

しかし、ほとんどの場合排卵は自覚できないため、誰でもわかる月経開始日を基準にしているのです。

妊娠検査薬が陽性になるのは、妊娠4週ごろからになります。

従って、みなさんが産婦人科にかかり始める時点ですでに妊娠4週以降になっていることになります。

この数え方でいくと、たとえば妊娠3ヶ月というのは、妊娠8週1日から妊娠11週6日までを指すことになります。

また、“臨月”にあたるのは妊娠37週からになり、医学用語では正期産(妊娠37-41週)と呼ばれます。

このように、月単位で話をするとだいぶ幅ができてしまいます。

胎児の発育も4週間でだいぶ進みますので、産婦人科医は原則「週」単位で表現することにしています。

余談ですが、私も医学生に授業をする際に、「医者になっても妊娠〇ヶ月って言っているのは、恥ずかしいからやめましょう」と教えています。

赤ちゃんのからだはいつからできるの?

赤ちゃんのからだを作るいろいろな臓器は、妊娠のどれくらいの時期にできあがっていくのでしょう?

実は、人間の体の“かたち”は、妊娠のかなり早い段階で完成します。

最もたいせつな心臓と脳(中枢神経)は妊娠3週ごろから、手や足の原形は妊娠4週ごろから形成が始まります。

眼、耳、口(くちびる)、歯といった細かい部分も妊娠5-6週から形成され始めます。

臓器によって差はありますが、だいたい妊娠11週ごろまでには、人間の体のほとんどの部分の“かたち”が出来上がっているのです。

そして、その後の約30週間(7か月間)の間に、それぞれのサイズが大きくなり、おなかの外で生きられるような“機能”を獲得していきます。

従って、妊娠4週から11週のあいだのことを“器官形成期”と呼び、この期間に一部の薬物や放射線などの曝露やウイルスの感染があると“かたち”の異常(先天奇形)を引き起こす原因になります。

逆にいうと、妊娠中期以降での曝露は、からだの“かたち”の異常の直接的な原因にはなりにくく、臓器の機能(働き)に影響を与えるリスクがあるのです。

ですので、妊娠12週までの期間は、妊婦さんは口にするものや周囲の環境にとくに気をつけましょう。

しかし、すべての薬が赤ちゃんの器官形成に影響を与えるわけではありません。

経験的に先天奇形のリスクが高いとわかっている一部の薬(ワーファリン、ACE阻害剤、抗がん剤など)は、妊娠中は禁忌(飲んではいけない)とされています。

一方、それ以外については、(当然人体実験をするわけにいかないので)動物実験のデータしかなく、ヒトの胎児への本当の影響はわからないものがほとんどです。

従って、持病があって薬を内服している方は、妊娠を考えた段階で主治医の先生に薬の相談をするようにしてください。

“薬”を飲んでいると妊娠できない、あるいは妊娠したら必ず“薬”はやめなければいけない、というのは、必ずしもそうでない場合もあります。

また、薬の種類を変更することで妊娠OKの場合もあります。

主治医の先生がわからないのであれば、ぜひ産婦人科に相談してもらってください。

一方で、絶対に安心という薬もないわけです。

特に、いわゆる軽い風邪程度で飲む(市販の)総合感冒薬には多くの種類の薬が入っていることが多いです。

もし、休養と保温でよくなるような風邪であれば、余計な内服はしないことも選択肢です。

赤ちゃんの身長・体重の目安

では、実際に赤ちゃんが(エコーで)みえるようになるのはいつ頃でしょうか?

「妊娠反応が陽性になった!」と思って(=妊娠4週)産婦人科を受診しても、残念ながら赤ちゃんをみることはまだできません。

まず、妊娠5週までに、胎嚢(たいのう)と呼ばれる、赤ちゃんの袋がみえてきます。

妊娠6-7週には、赤ちゃんが小さい点(1cm以下)でみえてきて、心拍がチカチカと点滅するのが確認できます。

妊娠8-9週になると、体長(頭からお尻まで)が2cmほどになって、頭と体のダルマ(クリオネという人も)のような赤ちゃんがみえます。

この頃になると、分娩予定日を決定して、「母子手帳をもらってください」とお願いすることが多いです。

妊娠12週以降になると、もう赤ちゃんがエコーの画面には体全体がおさまらなくなってきます(つまり体長が測れません)。

そこで、胎児の頭の大きさ(横幅)を発育の目安にして計測します。

頭の大きさは、妊娠12週ごろで約3cmですが、最終的には10cmまで大きくなります。

妊娠18週をすぎると、エコーで胎児の推定体重を計算できます。

これは、胎児の頭(横幅)、胴体(お腹まわり)、足(大腿骨の長さ)の3か所を測定し、難しい計算式にいれて算出します。

ただし、これはあくまで推定の体重ですので、最大で約10%の誤差が生じるといわれています。

妊娠20週頃はだいたい300-400g程度、妊娠27-28週頃には1000gまで成長します。

妊娠30-31週頃には1500g、妊娠34週頃に2000g、いわゆる臨月(妊娠37週-)に入ると2500g以上になってきます。

臨月に入ったあとも赤ちゃんは成長しますので、分娩予定日頃には3000g以上で出産となる方が多いと思います。

このように、産婦人科医は、推定体重を計算するためにエコーで体の一部分の計測を行っており、赤ちゃん全体を一画面でとらえることはできません。

ですので、ときどき「いま身長はどのくらいですか?」と聞かれる妊婦さんがいらっしゃいますが、実は、身長はエコーではまったくわからないのです。

また、実際には、分娩予定日ごろに生まれた赤ちゃんの身長は多くの場合45-50cm程度で、体重ほどの個人差はありません。

赤ちゃんはいつから生きられるの?

もちろん、ほとんどの人が、自分は臨月に入ってから分娩になると思っているでしょう。

しかし、実際には、それよりも早く生まれてしまう=早産になってしまう人が一定の割合(10%程度、日本人は5%)でいます。

では、どのくらい早い週数から、ヒトはおなかの外で生きられるのでしょうか?

早産児として生まれてくると、からだのさまざま臓器が未熟なため、当然NICUでの医療的なサポートが必要です。

従って、どのくらい早い週数ならば生きられるかは、その時代や地域での新生児医療の程度によって異なります。

現在、日本では、原則として妊娠22週0日以降に生まれた赤ちゃんを救命対象としています。

つまり、妊娠21週6日までに子宮から出てきてしまった場合には、「流産」として扱われます。

とても早い週数で生まれてきた場合、人工呼吸やチューブでの栄養が必要になるばかりでなく、頭の中で出血したり、おなかの腸がくさってしまうような合併症もおこります。

ばい菌の感染にも弱いので、入院中の感染症が命取りになる場合もあります。

日本の新生児医療は世界有数の成績を誇りますが、それでも妊娠22週の赤ちゃんの生存率がとても高いとはいえません(施設によって差がありますが、50-60%程度)。

従って、日本以外では、赤ちゃんが生きられる限界を妊娠24週としている国も多いです。

また、日本国内でも、妊娠22週、23週という超早産期の赤ちゃんをどこでも治療できるわけではありません。

従って、赤ちゃんをしっかりと臨月までおなかの中で育てることがとても大切です。

赤ちゃんの発育を知る方法

赤ちゃんが大きくなっているのかを知るためには、産婦人科でエコー検査をしなければわかりません。

しかし、エコーがなくても胎児の発育をチェックできる方法があります。

それは、「子宮底(しきゅてい)長」の測定です。

子宮底長とは、わかりやすく言うと、おなかの出具合、もしくは子宮がどれくらい大きくなっているかの目安です。

具体的には、あおむけに横になり、子宮の上の端(=子宮底といいます)から恥骨の中央までの直線距離をメジャーで測ります。

これは、子宮全体の大きさを反映しますので、当然、赤ちゃんだけでなく羊水の量も含まれるのが注意点です。

子宮底長の基準値は、妊娠20週(5か月)未満では「妊娠月数×3cm」、胎児の成長が早くなり、羊水も増えてくる妊娠5か月以降は「妊娠月数×3+3cm」で計算します。

しかし、もともとの体格や子宮の向きなどにも影響を受けやすいため、絶対値はあくまで目安です。

ですので、定期的に計測し、前回と比較してきちんと大きくなっているかをチェックする方がより有効な使い方でしょう。

日本では、毎回の妊婦健診で胎児エコーをする施設が多いかもしれませんが、海外では妊娠期間中に数回しかエコー検査を実施しない国もあります。

その場合、地域の看護師(保健師、助産師)に近い職種の人が、子宮底長測定で胎児の発育をチェックすることになります。

日本の母子手帳にも、子宮底長を記載する欄が設けられています。

赤ちゃんの発育に影響を与えるもの

赤ちゃんとお母さんがへその緒でつながっていることはご存知ですね?

妊娠すると、お母さんの子宮の中に胎盤(たいばん)がつくられます。

胎盤は子宮の壁にへばりつくように存在し、胎盤からへその緒(臍帯、さいたい)がでています。

へその緒の反対側が赤ちゃんのおへそにつながっています。

お母さんの血液中に流れている栄養や酸素が、胎盤からへその緒に流れて赤ちゃんに供給されます。

つまり、赤ちゃんの発育に必要なものは、母体 → 胎盤 → へその緒という流れで運ばれていくのです。(生まれた後は母乳を口から飲めるので、胎盤と臍の緒はその役割を終えます)

従って、赤ちゃんの発育には、

  1. お母さんの栄養状態
  2. 胎盤のはたらき

がとても重要であることがわかります。

まず、お母さんの血液中に十分な栄養が流れていなければいけません。

妊娠中は、ミネラルやビタミンの補給が必要になりますが、赤ちゃんの発育に特に必要な栄養素は炭水化物(糖分)とタンパク質だと言われています。

飢饉や戦争によって十分な食事がとれないような時代には、赤ちゃんの出生体重が今よりも小さかったことがわかっています。

しかし、現在の日本で、栄養が足りないような妊婦さんなんてほとんどいないのでは、と思うでしょう。

ところが、若い女性を中心に「やせ型」志向が広がっており、食事摂取量が極端に少なく、いわゆる「やせ」(BMI<18.5kg/m2)の女性の割合は増えています。

普段から“食が細い”ような人は、妊娠したからといって急に食事量が増えるわけではありません。

そのような「やせ」妊婦の増加によって、日本では出生体重が小さい赤ちゃんが増えているのではないか、と懸念されています。

つぎに、胎盤がきちんと栄養を赤ちゃんにとどけてくれないといけません。

胎盤のサイズが小さい、あるいは働きが低下している場合には、赤ちゃんの発育が滞ってしまいます。

具体的には、喫煙や高血圧(妊娠高血圧含む)は、胎盤の形成が悪くなるリスク因子として知られています。

また、妊娠前の体重もやはり胎盤の大きさと関係があり、「やせ」妊婦さんの胎盤は小さいことがわかっています。

ただし、どのようにすれば胎盤の発育がよくなるのかについてはまだよくわかっていません。

赤ちゃんが(週数相当より)小さい場合

超音波で計測した推定体重が、実際の週数と照らし合せて小さい場合を「胎児発育不全」といいます。

どのくらいの小ささかというと、同じ週数の赤ちゃんが100人いた場合、小さい方から数えて6人目ぐらいにあたる大きさ(6パーセンタイル)より小さい場合になります。

赤ちゃんが小さい原因は大きく3つ、

  1. 赤ちゃん本人
  2. お母さん
  3. 胎盤、臍帯、

が考えられます。

まず、赤ちゃんがなんらかの先天的な疾患を抱えていたり、あるいは感染症(ウイルスなど)にかかっていたりすると、通常よりも発育が不良になります。

このような疾患や感染症は、体のサイズが小さい以外の異常が胎児エコーではわからないこともあります。

次に、お母さんが、膠原(こうげん)病とよばれる種類の病気を持っていたり、血栓(血の塊)ができやすい体質であったりすると、胎児発育不全のリスクが高まります。

そして、赤ちゃん、お母さんに原因がなくても、何かの理由で胎盤の形成が不良ですと、当然栄養の供給が悪くなるので赤ちゃんの成長は滞ります。

これらのうち何が原因かは、赤ちゃんのサイズ計測だけではわからないので、高次医療機関での精密検査が必要です。

また、子宮内の環境が赤ちゃんの発育に不利なのであれば、週数が進めば進むほど、赤ちゃんにとっては苦しくなってくる可能性もあります。

場合によっては、たとえ早産期であっても赤ちゃんを娩出し、お腹の外(NICU)で育ててあげる方が、メリットが大きい場合もあります。

ただし、推定体重が「胎児発育不全」の範囲に入ったからといってすべてが病的ということではありません。

当然、クラスで身長の低い子から高い子までいるのと同じように、正常でも体格の小さい子はいて、たまたま6パーセンタイルに入ってしまうことがあります。

赤ちゃんが(週数相当より)大きい場合

では、反対に、赤ちゃんがとても大きい場合はどうでしょうか?

小さい場合と同様に、同じ週数の赤ちゃんを100人ならべた時に上から6人目以上の大きさに入ったら、「大きい」と認定されます。

赤ちゃんの推定体重が大きい場合にまず疑われるのは、お母さんの妊娠糖尿病です。(詳細は別の記事https://kokorokarada.net/magazine/gestational-diabetes/ にゆずりますが)

妊娠糖尿病とは、妊娠中に血糖値が高くなってしまう合併症のことです。

これは、妊娠前に血糖が高いと指摘されていない人におこるため、誰でもかかる可能性があります。

自覚症状はほとんどなく、糖負荷試験という精密検査をおこなわないと診断できません。

妊娠糖尿病になって、血糖値が高いまま妊娠を継続していると、赤ちゃんのサイズがどんどん大きくなり、巨大児(≧4000g)のリスクがあると言われています。

従って、赤ちゃんが大きい(+羊水が多い)と診断された場合には、一度妊娠糖尿病になっていないかチェックが必要です。

また、小さい場合とは逆に、お母さんが太り過ぎている場合には胎盤のサイズがとても大きくなり、赤ちゃんも大きくなることが知られています。

これは、妊娠前に肥満であることも、妊娠中の体重が増えすぎることも同じように影響があります。

赤ちゃんのサイズが大きい先天性疾患にはBeckwith-Wiedemann症候群などがありますが、頻度はとてもまれです。

“安定期”という言葉の誤解

妊娠の週数と赤ちゃんの発育についてお話してきました。

それに関連して、最後に、いわゆる“安定期”という言葉について誤った知識を持っている方がいるといけないのでお話します。

“安定期”とは、妊娠16週頃から、妊娠後期に入る妊娠27週前までの期間を指すことが多いようですが、これは医学的な用語ではありません。

“安定”と聞くと、なにか赤ちゃんの状態が安定してもう安心できる、というイメージを想像させますが、決してそういうわけではありません。

妊婦健診中に「安定期に入ったと思うので、旅行に行っていいですよね?」と聞かれることもよくあります。

しかし、実は、「安定期」というのは、つわりの症状がほとんどなくなる時期から、まだあまりお腹も大きくなっておらず、妊婦さんが過ごしやすい時期を“安定”と呼んでいるだけなのです。

「安定」しているのは、お母さんの体調であって、赤ちゃんでは決してありません。

先ほど書いたように、ちょうどこの「安定期」にあたる妊娠20週前半というのは、もし生まれてきてしまった場合、赤ちゃんにとってとてもリスクの高い時期なのです。

後遺症を残したり、最悪の場合亡くなってしまうこともある週数が含まれます。

もちろん、すべての人が切迫早産になるわけではありませんが、旅行先で「出血した、お腹が痛くなった」といっても、適切な診療が受けられなかったらどうでしょう?

お母さんの体調がよくなったからといって、なんでもしてよいというわけではありません。

起こり得るリスクとその結果についてよく考え、負担の少ない方法で妊婦生活をエンジョイして頂けたら、産科医としても安心です。

著者
田中啓
田中啓
産婦人科医 田中啓

■専門分野
産婦人科一般

■主な経歴
東京大学医学部出身

■取得資格
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
アプリがリリースされました。

マタニティヨガ・産後ヨガ・産後ダイエットの動画アプリ完成!!

テーマごとに見やすく分類されていますので、お役に立てるはずです。
ぜひ、ダウンロードしてみて下さい。
※無料アプリなので、機能面はあまり期待しないで下さい。